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33年目に知ったAT-33Eの実力

現用のカートリッジはオーディオテクニカのAT-33Eだ。
このカートリッジ、実に1985年から33年間も使っているが、まだまだ現役で衰える気配がない。
AT-33Eにはテーパード無垢のベリリウムに金蒸着で鳴きを抑えたカンチレバーが採用されている。
一度ベリリウムのカチっとした音を聴いてしまうとアルミカンチレバーの音はシャリシャリした感じに聴こえる。
当時の評論家の評価は「低域に力があり、中域が薄く、高域は鮮やかに再現する」ビギナー好みのドンシャリだった。
一方で当時最高に人気を博し大ベストセラーとなったカートリッジでもある。
その知名度もあり、現在も33シリーズとして新製品が出続けており最新最高級品はAT33Sa。
シバタ針を擁して価格は初代の3万円台から¥112,500まで跳ね上がっている。
はたして、このシリーズの音は本当に向上しているのだろうか。


改めて現用システムでデジ・アナ比較を行ってみた。
デジタルはオーディオ専用に組んだPCとパイオニアのDAC U-05をUSB接続。

USB環境にはASIO、USB増設カード、コモンモードノイズフィルターを使用している。

アンプはYAMAHA AS-2100、スピーカーはYAMAHA NS-1000Mの構成。

アナログは、KENWOOD KP-1100、オーディオテクニカのマグネシウムシェルにOFCリード線で取り付けたAT33-E、
アンプとスピーカーは同じ。MCヘッドアンプは通さずMM入力とした。

評論家の言葉に刷り込まれた先入観とは恐ろしいものだ。

事前にはAT33Eは高域で勝ち、低域は引き分け、中域は厚みでデジタルに負けるだろうと思っていた。
しかし、同じマスタリングのアナログマスターからプレスされたレコードとリッピングしたCD音源を、
音量を合わせ、よーいドンで同期させて再生し、セレクターで切り替えて比べたところ、
両者はまったくと言ってよいほど同じエネルギーバランスで再生されたのである。
迫力、厚み、透明度、キレ、繊細感、三次元的な定位など耳を疑うほどそっくりだ。
A-S2100のフォノイコライザーとの相性もあるだろうがAT-33Eは極めてフラットな音を聴かせたのだ。

もう一つ驚いたのは、高域の瞬発力が同じだったということ。
これも先入観で、カートリッジは盤面を滑らかにトレースするのではなく引っ掻いていると考えていた。
そのため、アナログの方が高域の瞬発力のようなものが機械的に負荷されて活きのよい音になると思っていたのだ。
しかしこれも同等だった。
この結果は逆に、デジタルの音がついにアナログに追いついたのだということを実感させられる結果だった。

では、AT-33E以外のカートリッジはどうなのか?その違いはアナログならではの楽しみということになると思う。
実際、オーディオテクニカの創業35周年モデルAT-33PTGはAT-33Eの中低域に厚みを与えてより重厚な音になっている。
この音はアナログ全盛期であれば「AT-33Eの弱点をカバーしたモデル」と評されて絶賛されたことだろう。
実はAT-33PTGは、AT-33Eがそろそろ寿命だろうと思って、ストックのつもりで20年前に買ったモデルである。

35周年記念だけあって当時の最高の素材にこだわり金蒸着ボロン無垢のテーパードカンチレバー、

PCOCC6Nコイル、ピンはPCOCC、リード線にはLC-OFCを使っている。
高域はAT-33Eよりやや薄いが、これはカンチレバーの材質の違いからくるものではないかと思っている。

本来は、デジタルは正確に、アナログも正確にというのが理想だと思うが、
アナログには音に直接変化を与える要素があり、それがデジタルにはないアナログの面白さでもある。
AT-33Eがデジタルと同じということは、我が家のシステムではいくら高いカートリッジを買っても音は向上しない。
しかし、音は変化する。その音を好むか好まないか、また値段に酔えるかどうか。その違いになるのだろう。

私は高いだけのカートリッジは使う気がしない。  

posted by kitigreen | 18:43 | Audio | comments(0) | - |
壊してしまったコンポたち
■LUX B12
今まで使った中で最も印象に残るパワーアンプであり、最も未練が残るパワーアンプでもある。
このアンプは評論家の瀬川冬樹さんが推薦されていたもので、ショップのバーゲンで半額で入手した。
キャンタイプのトランジスタを8個使った4パラレルプッシュプルのモノラルアンプだ。
初めてのセパレートパワーアンプでもあり、その音は期待をはるかに超える素晴らしいものだった。

透明で克明で力強く目に見えるような音は、それまで使っていたプリメインアンプのパワー部とは次元が違う。

 

あるときオーディオ誌で行われたブラインドテストで各社のパワーアンプの中でB-12が最高得点を獲得した。

 

面白いのはそこからだ。
ではB12が大賞を受賞かというと、オーディオ評論家が口を揃えて言い訳を始めたのだ。
「この結果はたまたま」「やはり良く聞けば別のアンプが現代的」「環境が違えば結果も違う」
そして大賞を受賞したのは別の有名なベストバイコンポだったのだ。
大人の事情があるとはいえ、B12の実力証明されたことは紛れのない事実だ。

 

しかし惜しいかなこのアンプは焼いてしまった。

 

オーディオ誌でヒューズを変えると音が変わるというので悪乗りして銅線に置き換えた。
すっかり忘れてそのまま使っていたところ今度はパワーアンプをバッファアンプにすると、
インピーダンスが低いのでピンケーブルを延長しても影響が少ないという記事を読んだ。
なんでも試してみたくなる性分なのでケーブルを配線中にショートさせてしまった。
プシュっと音がして異臭が漂いそのまま昇天してしまったのだ。
このアンプの音にはなんとも未練が残る。

 

■マイクロ DQX500
オールダイキャスト製キャビネット、クオーツロックダイレクトドライブ、セパレート電源、
ダイナミックバランスアームで共振キャンセラー付きで8万という割安感のあるプレーヤー。
このプレイヤーはキャビネットがダイキャストなのでアーム取り付け部に溶かした鉛を流し込んだ。
純銅製重量級シートを載せターンテーブルの共振をシャットアウトした。
これらは大成功で驚くほどソリッドな音質に変貌した。

 

悪乗りはここからだ。
まずダイナミックバランスアームを分解し再度組み立てたところバネの張力が変わってしまった。
何とか調整しようといじってるうちに部品が折れ、接着剤で直したが感度が落ちて使い物にならなくなった。

 

次に、ターンテーブルとキャビネットの隙間が5ミリほど開いていたため、
隙間ギリギリになるまでターンテーブルの穴をリーマーで広げて重心を下げようとしたところ、
偏心してクオーツロックが外れてしまった。
水中用のエポキシボンドで補修して精度を出そうとしたがどうしても直せなかった。
改造したDQX500のソリッドな質感は忘れられない。

 

■カートリッジ
オーディオを初めてすぐ、日によって音が違うことに気付いた。
原因は気温によるダンパーのコンプライアンスの変化や湿度によるスピーカーのm0の変化などが絡みあ合うが、
中でも影響が大きいのはカートリッジのダンパーだ。気温が下がると硬化して明らかに抜けの悪い音になる。
試しにドライヤーで温めてみたところ、目の覚めるような鮮烈な音になった。しかしすぐに元に戻ってしまう。
そこで、分解してダンパーを減らしたり、ワイヤーを緩めたりしてみた。
結局音は変わったが期待通りにいかず、コイルを切ったりカンチレバーを折ったり散々だった。 
不注意で針を折った数は数え切れず。
アロンアルファで修復できるが、針先実行質量はメーカーの設計より重くなってしまう。
カンチレバーの鳴きのダンプには効果あるかも知れないがメーカーの意図する音とは変わってしまう。
現行のカートリッジは針をらないよう、細心の注意を払って使っている。
posted by kitigreen | 17:14 | Audio | comments(0) | - |
DENON PRA-2000への想い
プリアンプPRA-2000は評論家の長岡さんがリファレンスに選んだ機種であり、発売当初から入手したいと思っていたがその出会いは遠回りだった。
単体10万円のヘッドアンプと同じヘッドアンプを内蔵して20万円!これは欲しい!しかしあまりの人気でどにこも在庫がなかった。
私は欲しいものはどうしても待てない性分なので地方のオーディオショップなどにも電話をして静岡に在庫を見つけた。
しかし、そのショップの売価は秋葉原価格とは大きく差があり、手持ちのバイト代が数万円ほど足りない。
あと1か月貯めればよいのに、5C50も既に売ってしまったこともあって当時コストパフォーマンス抜群と評されたONKYO P306に走ってしまった。
5C50の後ではP306の音は価格以上でも以下でもなく逆に安いものを使っているということにも満足できない日々を送ることになった。
いつの日かPRA-2000への思いも次第に薄れ、ブランド名だけでアキュフェーズのP230をしばらく使っていた。

 

何年かが過ぎて、ふと立ち寄ったオーディオ店でPRA-2000の中古良品を見つけた。
そのとたんに欲しい思いが蘇り気が付いたら即決していた。
PRA-2000の音は・・予想以上にすごいものだった。
明るく芯があって繊細で鮮明鮮烈、全ての音が三次元的に交通整理されているかのように楽器の定位が明確になった。
なんと長かったことか、これでようやくゴールが見えたと思ったのもつかの間、半年ほどでリレーの接触不良が発生した。
別の入力端子に繋ぎ変えてしのぐ・・また接触不良になる・・テープセレクタに繋ぐ・・今度はphonoが・・
騙し騙しなんとか使っていたが、長岡さんがFM誌でサンスイのAUα907iMOSを絶賛したことから思い切ってプリメインに回帰した。
時代はすでにCDが全盛、いまさらとばかりphonoイコライザーは割り切った。

 

ところが時がたつにつれ次第にphonoイコライザーへの不満が募ってきた。
AUα907iMOSのphonoイコライザーはイマイチで、MC入力とMM入力の音の差も大きいし、三次元的な広がりにも不満がある。
ああ、PRA-2000を繋ぎたい・・
すると、タイミングよく店頭展示品のPRA-2000Zがオークションに出てきたのでまたもや即決した。
PRA-2000Zのphonoイコライザーの音は涙ものだった。プリ部もすごい。まさにPRA-2000の感動再びである。
しかし、若干ノイズが気になる。外観は綺麗だが店頭で使い込まれたためコンデンサーの寿命が終了寸前だったのだ。
問題のあるコンデンサを換装すると気になるノイズは消えた。

 

このプリはかなり遊んだ。一度半田ごてを入れてしまえばもう怖いものはない。
まず100個以上の全てのコンデンサーをオーディオ用ミューズに換装してみた。
これは失敗、芯が弱く艶の乗りすぎたキャラクターになった。
電源回りのコンデンサーだけ一般用に戻してみる。
だいたいキャラクターは元に戻ったがphonoイコライザーの音に芯と力が物足りない。
もしやと思い外したコンデンサーに磁石を近づけてみるとphonoのカップリングコンデンサーの足がくっついたのだ。

 

電力用の一般のコンデンサーの足は磁性体であるが、オーディオ信号線のコンデンサーは一般には非磁性体が使われている。
磁性体にオーディオ信号を通すと派手なキラキラしたキャラクターになるからだ。
しかしPRA-2000Zでは一つだけ磁性体のカップリングコンデンサーが扱われていたのだ。
これこそまさにメーカーが意図した音作りである。
このコンデンサーを非磁性体のオーディオ用から磁性体一般用のコンデンサーに換装したところ、
オーバーホール前の音が完全に蘇ったのである。

 

生涯このアンプのphonoイコライザーを使い続けた長岡さんがこの事実を知って使っていたかどうか今となっては知る術はないが、
オーディオ回路は「純粋で潔癖でなければいけない」などということはない。
PRA-2000Zには音が良ければそれでいいのだと教えられた。

 

posted by kitigreen | 14:39 | Audio | comments(0) | - |
YAMAHA NS-1000Mとの出会い
30年以上前になるが、義弟にオーディオコンポの選定を頼まれたことがある。
その時勧めたスピーカーは私自身一度も音を聴いたことがないNS-1000Mだった。
オーディオ評論家の瀬川冬樹さん長岡鉄男さんも勧めているしリファレンスとして使っている評論家もいる。
何より途方もないコストパフォーマンスでベストセラーでもあり海外で初めて認められた国産機でもある。
一度も聴いたことがなかったが、間違いはないという確信・・というより聴いてみたいという思いがあった。
義弟は秋葉原の販売店で巧みに値切りながら1本あたり8万程度で購入した。

 

その後、義弟が結婚して家族が増え、家が手狭になったということでNS-1000Mが我が家にやってきた。
バックロードホーンの分厚い音に慣れた私にとって第一印象は端正で中高域が薄いという印象だった。
 
NS-1000Mは、スコーカーとツイーターに当時唯一のベリリウム振動版を採用していた。
ドームはハードかソフトかという論争のさなかNS-1000Mは究極のハードドームを登場させたのだ。
ベリリウムは非常に軽く強靭で音速が速い理想の振動版だが加工は非常に難しいという。
YAMAHAはドームの基材にベリリウムを蒸着させたのち基材を溶かすという方法でこれを実現した。
現在でもハイエンドスピーカーに稀にベリリウムツイータを採用するものがあるが、
大口径ベリリウムのスコーカーを採用したスピーカーは後にも先にもYAMAHAだけだろう。

 

ベリリウムの加工が極めて困難であること、差別化を図ることなどもあり他社では、
ボロン(ベリリウムより硬いが重くて脆い)や、ダイヤモンドコーティングなどで対抗した。
しかし、ボロン振動版は衝撃で割れてしまったものが多いようだ。
またこの時代のユニットはウレタンエッジが多く数年でボロボロに劣化してしまう。
当初から放送局のヘビーデューティを想定したNS-1000Mは布エッジを採用しており現在も健在だ。

 

NS-1000Mのコストパフォーマンスの高さはユニットが単品販売されたことからも伺える。
ツイータが2.5万、スコーカーが7万、ウーハーが4万だったと記憶している。
ユニットだけで13.5万だが、NS-1000Mはキャビネットとネットワークもついて10.8万で売られていたのだ。
音質面からのコストパフォーマンスも驚異的なレベルだ。
使い込むと透明感、繊細感、音場、切れの良さ、これ以上の音はないのではないかと思えてくるほどだ。
実際、ショップでこれに近いレベルの音が出ていると思えるスピーカーは50万円以上である。
バックロードホーンと比べると中高域が薄いが、毎日音が変わり気を揉まされるバックロードと反対に、
正確無比、いつでも同じクオリティの音を再生してくれる安定感は純粋に音楽を楽しむ上で大きなメリットだ。

 

現在、我が家のメインスピーカーはNS-1000Mにバトンタッチした。

そして20年、エージングされ尽くしたタマムシ色に輝くベリリウム振動板の音は他に替え難い。

posted by kitigreen | 15:29 | Audio | comments(0) | - |
YAMAHA A-S2100の覚醒
出会いとなった転機は二年前、40年間使ったSANSUI AU-α907iMOSが故障しかけたときに遡る。
突然右チャンネルが歪っぽくなり、サインウエーブを再生すると明らかに変調された音になった。
いよいよアンプの交換が必要なのか?これは悩ましい問題だ。それほどAU-α907iMOSは音が良い。
この写実的で生々しいアンプと同等の音を出せるアンプがこの世に存在するのだろうか。

このアンプは当時27万だったが、現時点で同じ内容の国産アンプを探すとなると50万円代になる。
以前であればオーディオ誌に踊らされて新機能の絶賛品を買うところだが褒められすぎている商品は怪しい。
実際、評論家が自宅で使いもしない商品をべた褒めするのは商売心以外の何物でもない。
AU-α907iMOSには激戦を勝ち抜くべく涙ぐましいほど冗長を重ねていると思える部分もある。
銅シャーシ、銅の半導体スタビライザー、同箔コンデンサー、別巻線トランス、極厚アルミ天板、銅無垢インシュレータ。
実はこのような配慮の有無はYAMAHAのA-S3000とA-S2100の関係に極めて似ている。
しかも、このアンプはどちらもAU-α907iMOSと同様パワーMOS-FETのバランスアンプで回路もパーツも同等だ。
フォノイコライザーも重要なポイントだが、どちらも完全ディスクリートのMCヘッドアンプ方式でやはり同等だ。
ならばこだわりをそぎ落とした27万円のA-S2100も使い込めば十分納得できるだろう。
経験論だが、30万円前後の重量級中級プリメインは物量投入の限界点にあると思っている。
それ以上手をかけても音は変わるが良くなるとは限らないという限界点である。
そしてA-S2100が我が家にやってきた。しかし一聴してAU-α907iMOSにあらゆる点で劣る。
音場が狭く透明度が低く音が明るすぎて情緒がない。唯一の繊細感は抜群だった。
この状態で使い続けるのは辛いのでAU-α907iMOSと切り替えて使っていた。
半年が過ぎ、一年が過ぎ、二年が過ぎエージングによる音質改善効果は遅々として現れない。 

 

そして一つ目の奇跡が起きた。
AU-α907iMOSの右チャンネルの歪がいきなり、何事もなかったかのように直ったのだ。
それならA-S2100を使い続ける理由かないしエージングの手間も省ける。
地方の買取ショップに電話で見積もりを聞いたところ半額以上で買い取りしてくれることが分かった。
しかし、二年間の愛着もありすぐには売る決心がつかなかった。

 

そして二つ目の奇跡が起きた。
A-S2100の音場が突然二倍の広さになった。音像も生々しくリアルでシャープで繊細で温かく柔らかい。
多くの点でAU-α907iMOSを上回り思わず感嘆のため息がでてしまうような魅力的な音に化けたのだ。
この時からA-S2100は名実ともに世代交代しメインの座に就いた。

 

もし、あのとき売ってしまったらこの音と出会うことはなかったと考えると不思議な出会いを感じる。
メーカーがしっかり音決めしたアンプは根気よく使えば必ず本領を発揮する。
しかし、A-S2100でこの音を聴いたオーディオ評論家はほとんどいないだろう。

 

posted by kitigreen | 14:47 | Audio | comments(0) | - |
バックロードホーンとの35年の付き合い
スピーカー選びも流行やオーディオ誌の評価に揺さぶられて迷走した。
デコボコした何とかバッフル、ラウンドバッフル、リニアフェーズ、平面スピーカーといった目新しい方式や、
ブックシェルフ、フロア型、フルレンジと手あたり次第使ってみたが結局納得できず買い替えを繰り返した。
どうしても音のヌケが悪く、こもって聴こえるのだ。本物のシンバルのように厚みのある炸裂する高音が出ない。
トーンコントロールを使えばかなり聴ける音になる。更にグライコを使えば好みのバランスにすることはできる。
しかし電気的にいじった音では所詮スピーカーの再生能力を拡張することはできない。

 

そこで関心を持ったのがFOSTEXのFE-203二発用のバックロードホーンのBOXキットだった。
バックロードホーンは簡単に言えばスピーカユニット背面の音にホーンロードを掛けて位相をずらし放出することにより、
アンプのパワーを最大限、音のエネルギーとして利用しようというものだ。
評論家の長岡さんがリファレンスとして常用していて市販20万円級を凌ぐ音と言われていたので、
高いスピーカを買ってハズレるよりはいいだろうという気持ちで組み立てた。
ちなみに一本当たりのコストは板材キットが2.5万円(突板仕上げでグリルネットもありルックスは良い)、
のFE-203が0.6万円x2本、FT-65Hが1.5万円、FT-90Hが0.9万円でトータル5.5万円ほどである。

その音はツイーター無しでは昔のラジオが馬鹿デカくなったような音で、とてもハイファイとしては通用しない。
フルレンジの自作経験からある程度予想はしていたが、それ以上に中域が突出して低域がモゴモゴした「すっとんきょ」な音だ。
しかも、ツイータを追加しようとすれば相性の良いユニットは極めて限られてくる。
長岡さんがツイーターにはYAMAHA JA0506彊奮阿硫擦亙歉擇任ないと言われていた通りだ。

 

ツイーターに必要な要件は高能率で中域が明るく、高域がしなやかで繊細で艶があること。
最初はFT-65Hからいくつか試してみたが、モワっと膨らんだ中低域にシャリシャリした音が加わり、
いかにもツイーターを載せましたという音になってしまう。
結局YAMAHA JA0506兇帽圓着いた。
このツイータの独自の明るい中域が曇った中低域に透明感を与え、柔らかくしなやかな高音がフルレンジのキャラクターそのままに伸びる。
かなりアコースティックな鳴り方になるので高域にスパイスとしてシャキっとした音のスーパーツイータを加えると文句なしの中高域になる。

 

高域を強化すれば、相対的に低域の量感不足が目立ってくる。
グライコで低域を持ち上げれば聴感上のバランスはとれるが、40Hz以下はホーンロードが掛からず空振りする。
このスピーカーでワイドレンジを狙おうとすればサブウーファーが必須なのだ。
サブウーファーも相性が限られていてバックロードホーンの軽い低音と密閉型の重いパンチの効いた音は繋がらない。
これは試しにYAMAHAのNS-1000Mを低音用にバイアンプ駆動した経験によるものだ。
そこでスーパーウーファーもエアウーハー(ヘルムホルツ共振)のYAMAHA YST-SW1500とした。

 

この組み合わせで出てくる音は一般的なマルチウェイスピーカーの薄く上品な音とはまるで違う。

音が鼓膜を直撃し、分厚いボリューム感のある音が部屋を朗々と満たす。

あえて欠点を上げるとすればホーンの宿命である指向性の狭さだろう。

リスニングポジションは確実に1点に絞られる。

 

自作スピーカーの良いところは、クロスオーバーやボリュームを好み通りに調整できる点だ。
これだけは自作でなければ得られないメリットである。
このスピーカーは途中でFE-203からFE-203Σに、FT-65HからJA0506兇亡港して約35年間何度も調整を繰り返しながら常用した。
非常にタフでエッジの劣化もなくいまだに現役で使える。
posted by kitigreen | 17:35 | Audio | comments(0) | - |
オーディオコンポへのこだわり
オーディオコンポへのこだわりは、ただ一つ「何もいじらない」である。
20代までは更に音を良くしようとオーディオコンポを色々と改造した。
内部配線の交換、コンデンサーの交換、ヒューズの交換、スピーカユニットの交換、インシュレーターの交換。
更にはバイアス電流の変更、NFB量の変更、ターンテーブルの穴を削って低重心化、アームの改造。
しかし、手を加えて音が良くなった経験は一度もない。

この過程でプリのラックス5C50のキャビネットのかみ合わせを間違え音が激変する経験があった。
ラックス5C50は脳に直接染み入るような、他のプリでは後にも先にも経験したことのない快感を伴った透明感を持っていた。
ところが、キャビネットを閉じた後、その音が突然黒板を引っ掻くような不快な音になってしまったのだ。
最初は原因が分からず当惑した。でも音が変わった前後で異なるのはキャビネットだけである。
そこで改めてキャビネット確認すると本来外側にかみ合わせるべき部分が内側にかみ合っていることに気づいた。
まさかそれで音が変わるはずがないと思いながら元に戻してみて驚いた。
嘘のように不快な音が無くなったのである。


私はそれ以来、現用コンポには一切手を加えないことにしている。

コンポはメーカーのオーディオデザイナーが音決めをし、エンジニアがチューニングしている。
チューニングされた音はメーカーの最善の音であり勝手に手を加えてもバランスを崩すだけなのだ。
私は置き場所や置き方も関係ないと思っている。置き場所で音が変わるようなコンポは本質的に未完成だ。
また、音を変えるような行為も良くない。私はコンポそのものの音を尊重する。

 

オーディオコンポを頻繁に交換するうちは決して良い音に巡り合えない。
そこで堂々巡りに改造やグッズ交換を繰り返し、やっぱり駄目だと買い替える。
物量投入型でしっかりチューニングされたコンポーネントは諦めずに使い込めば必ず本物の音が見えてくる。
私の経験則である。
posted by kitigreen | 17:34 | Audio | comments(0) | - |
好きなオーディオ評論家
■瀬川冬樹さん
国産中級クラスから海外最高級クラスまで、価格に関わらず良いものは良いと評価した評論家。
なんとか手の届く製品から高級車が買えるほどの製品まで、夢と現実の両方を楽しませてくれた。
この時代の製品は、いつか自分も手に入れたいという憧れの製品が多かった。
その評論には目標とする音に近づけるための解説が整然と示されており説得力があった。

 

この人の影響で手に取ったコンポはモノラルパワーアンプのラックスB12、プリアンプのラックス5C50、
マイクロ精機のプレーヤ、カートリッジのエラック795E。
いずれも評論通りの音で驚いた。一言で言うなら水もしたたるいい音。
現役であればグレードアップする気が起きなかったであろう魅力的な製品だった。

 

しかしその後・・新しもの好きの虫が発生してオーディオ誌で褒められる製品に次々買い替え、
満足できないままオーディオ沼に入り込んでしまうことに。

 

■長岡鉄男さん

コストパフォーマンスという言葉を確立させ国産機の性能を底上げした評論家。

海外製品は1ドル360円の時代にあってコストに見合わないとして取り上げなかった。
変動相場の時代になっても海外製品は部品からOEMまでほとんどが日本製であり逆輸入のコスト高を嫌って取り上げていない。
その評論は持ち前の文章力によって目に見えるように表現され非常に参考になるものであった。

 

長岡さんは一貫した省エネポリシーを持っていた。自身が貧乏性と公言する通り無駄を徹底して嫌う。

この考えにより若い世代のユーザーを中心に当時圧倒的な支持を受け業界を動かすほどの影響力を持った。

通常のスピーカーはユニットの前面の音しか使っていない。
そこでこだわったのが、ユニットの背面の音も使うバックロードホーンや共鳴管システムだ。
バックロードホーンは裏面の音までほぼ100%使っておりその能率は1メートルで1ワット時に100dbを超える。
この高能率スピーカーをリファレンスとするためアンプの音質は通常の10分の1の出力領域がシビア評価された。
長岡さんの評論はアンプの小音量時のクオリティーにフォーカスされていたと言っていいだろう。

 

同様の省エネ思想で、海外製に例が多い低能率ウーハーと高能率ホーンのマルチウエイも嫌っていた。
ウーハーとバランスをとるためホーンには10db超のアッテネータを介す。
このためアンプのパワーの90%はこのアッテネータが消費することになる。
なんともったいないことか、というわけである。

 

もう一つ、長岡さんがこだわっていたのがパワーMOS-FETだ。
特に小音量時の音の粒度がバイポーラトランジスタとは一線を画すきめ細かさとキレの良さがあると主張されていた。

 

母屋にメインシステムを構えていた時代の長岡さんの評論は国産エントリー機から国産中級機までに限られていた。
長岡さん自身、自分で買ったものは鉛の重しくらいでコンポはメーカーが勝手に置いていくと言っていた。
長岡さんの元にはエントリーからハイエンドまで様々な機器が持ち込まれ、
メーカーからはハイエンドをリファレンスにしてほしいと申し出を受けるがすべて断ったそうだ。
これは自身が買うことを考えた際、分相応の価格でワンランク上の音を狙うというポリシーを貫いたからだ。

その結果、競争が激化し国産エントリーは海外製中級機並み、国産中級機は海外製高級機に勝る物量投入時代となり、

メーカは薄利となってしまったようだ。

 

ユーザにとって長岡さんの大きな功績は、自身がリファレンスとしていた20万円〜30万円の中級機のクオリティを圧倒的に押し上げたことだ。
なにしろメーカーは最高でもこの価格帯に納めなければ取り上げてすらもらえない。
手を抜いて作れば良い評価はもらえない。良い製品を作ってリファレンスで使ってもらいたい。
メーカは総力を挙げてこの価格帯に最大の物量を投入せざるを得なかったわけだ。
ユーザはその恩恵を受けて庶民でもなんとか手が届く価格で「最高の音」を手にすることができた。

 

長岡さんの影響で組んだシステムはサンスイのAUα907iMOS、デンオンのPRA-2000、2000Z、ケンウッドKP-1100、
そしてFOSTEXの20センチx2のバックロードホーン。
特にサンスイのAUα907iMOSは長岡さんの母屋で最後まで使われていたアンプである。

 

1990年代、方舟に仕事の拠点を移されてから長岡さんは変わった。
メーカを競争させる評論から褒め上げる評論に変わり、国産・海外問わず持ち込まれた最高級品からリファレンスを選ぶようになった。
「今は我々がメーカーを支えてやらにゃいかん」長岡さん晩年の言葉である。
アナログへの拘りは最後まであったようで、最高級プリを使ってもフォノ入力にはPRA-2000Zのイコライザー部を使っていた。
本当は引退して静かな環境で悠々自適に音楽を楽しみたかったのではないだろうか。
 
■小原由夫さん
最近ではこの人が音のわかる信頼できる評論家だと思っている。
なぜなら、リファレンスに頂点の機種を使っているからだ。最高の音を知らなければ音の評価はできない。
そしてこの2年間使い込んでようやく開眼したヤマハのA-S2100の音質を的確に評価されている唯一の評論家である。
昔は半年ごとに新製品が出るのが恒例だったため評論家が言ったことはすぐ流れてしまう。
後から再び評論することなどもなかった。
ユーザーも半年ごとにせっせと買い替えるから以前の機種など眼中から消えてしまう。

しかし製品サイクルの長くなった現在では数年前の製品も現役である。
自宅で使って音を熟知している機材の評論は評論家自身を評価する上でも都合が良い。
技術者の話の受け売りや、他の評論家の言葉、価格に左右され、きちんと音と向き合ってない評論家の多いこと。
そんな中にあって小原由夫さんには音や良いコンポに対する愛情や目効きの確かさが感じられる。

意味の分からない日本語を駆使して分かったような提灯評論をする職業評論家とは一線を画す。

 

評論家は悪い製品を悪いと評価することはできない。そんなことをしたら依頼が無くなり干されてしまう。

オーディオブームが去った現代に頼りになる評論家とは、むやみに数多くの製品を評論している評論家ではなく、

自分が良いと評価できる製品だけを評価する評論家だ。

posted by kitigreen | 20:57 | Audio | comments(0) | - |